独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
 馬車で一日あればアルドノア王国の都に着いてしまうので、必要があればすぐ向かうことができる。それに、明確な目的があってアルドノア王国を訪問するのではなく、どちらかというと周辺諸国の王族や貴族と顔を繋いでおこうという意味合いの方が強い。

「正確に言うと、フィリーネを王太子妃に、じゃなくてフィリーネを王太子妃候補の一人として招待するので王宮に滞在してくれないかという申し入れだったよ。なんでも、アーベル殿下は結婚願望皆無でさ。近隣諸国の王族貴族の女性を集めて、その中から王太子妃を選ぼうって話らしい」

 どうやら、フィリーネがアーベル王太子の妃に選ばれたのではなく、アーベル王太子の妃候補としてアルドノア王国に招待されたというのが正解のようだ。
 アルドノア王国のアーベルは、今年で二十三歳になったという。フィリーネが十八歳になったところだから、五歳年上ということになる。
 そんな彼は、二十三歳になる現在まで浮いた話が何一つない上に、結婚にもあまり興味を示していないらしい。
 息子がこのままでは一生独身だと不安になったアルドノア王夫妻は、周辺諸国の独身女性、王族、それに準じる高位貴族の令嬢達に招待状を送ったのだそうだ。
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