独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「ほら、毎年春が来たら、アルドノア王国に大陸中の貴族達が集まるじゃない? 今年は、その時に妙齢の王女や貴族令嬢を連れてきてほしいって要請がアルドノア王国の方からあったんだってさ」
アルドノア王国は、春から夏にかけての三か月の間は、周辺諸国との友好を深める機会にあてている。国の間のやりとりは年間を通して行われているものの、その期間は特に盛んなのだ。
多数の有力貴族や王族がアルドノア王国に集まるということもあり、この時期は大陸中の国の交流が活発化する。各国の貴族や大使といった国の代表が、アルドノア王国で交流を持ったり、複数国間での懸案事項の解決にアルドノア王国の国王や貴族が手を貸したり。
ここ百年ほど、戦がほとんど起こっていないのは、こうしたアルドノア王国の努力があってのことだとフィリーネも知っていた。
「そういえば、お父様もお母様も毎年この時期にはアルドノア王国から招待されて訪問していたわね」
まるまる三か月アルドノア王国に滞在する必要もない。他国の代表達は三か月ほど滞在しているものの、フィリーネの両親が滞在するのはせいぜい一週間だ。