独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
 手っ取り早く手紙の内容を説明すれば、『アーベルと親交を持つ機会を作るので、どうか彼の心を射止めてくれ』ということになる。
 これから三か月の間、アルドノア王国に滞在し、誰がアーベルの心を射止めるのか、女の戦いが繰り広げられるというわけだ。

「おかしいとは思ったのよ、私を王太子妃になんてありえないもの」
「でも、間違いでもなかったでしょ。王太子妃候補に選ばれたんだもの」

 ヘンリッカはむぅっと膨れた表情になった。膨れられても正直困る。

「何が選ばれた、よ。周辺諸国の王族貴族の独身で妙齢の女性すべてに招待状を送ったのでしょ。それなら、私に話が来てもおかしくはないわよ——まあ、私はこの国の王位継承者だから簡単に国外には嫁げないけど。私に送ってこないってわけにいかなかっただけでしょ」

 現在エイディア大陸には、アルドノア王国、それからフィリーネとヘンリッカの故郷であるユリスタロ王国を含め、大小二十以上の国がひしめき合っている。
 各国から選りすぐりの高貴な身分の美少女美女がやってくるわけで、フィリーネが太刀打ちできるとも思えない。
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