独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「だからお前は契約を遂行できるのにふさわしい格好をすべきなんだ。ほら、行くぞ」
だが、手を引かれてそのまま店の中に連れていかれたら悪い気はしないのだから、困ったものだ。
「これはこれは、王太子殿下。まさか、このようなところにいらっしゃるとは……」
奥から慌てて出てきた店主は、中年の男性だった。仕立屋として長い間働いていたのだろう。彼の身に着けているものがいい品であることは、フィリーネもすぐに見抜いた。
「クライン、この娘にドレスを見立ててくれ。支払いは俺が」
「ちょっと待って!」
「ちょっと待てって、お前な!」
店主を呼びつけ、偉そうに命令するアーベルを差し置き、フィリーネは鞄の蓋をぱかっと開いた。
「その前に、これを見てもらえませんか。我が国の特産品なんです! まだ、誰にも渡してないの」
ドレスを買ってくれるというアーベルには悪いが、令嬢達が話を聞きに来てくれないのなら、ひとつ、ドレスを提供する側に見てもらうというのもありだろう。
アーベルに鞄が大きいと呆れられながらも、この鞄を持ってきた理由はそこにある。
だが、手を引かれてそのまま店の中に連れていかれたら悪い気はしないのだから、困ったものだ。
「これはこれは、王太子殿下。まさか、このようなところにいらっしゃるとは……」
奥から慌てて出てきた店主は、中年の男性だった。仕立屋として長い間働いていたのだろう。彼の身に着けているものがいい品であることは、フィリーネもすぐに見抜いた。
「クライン、この娘にドレスを見立ててくれ。支払いは俺が」
「ちょっと待って!」
「ちょっと待てって、お前な!」
店主を呼びつけ、偉そうに命令するアーベルを差し置き、フィリーネは鞄の蓋をぱかっと開いた。
「その前に、これを見てもらえませんか。我が国の特産品なんです! まだ、誰にも渡してないの」
ドレスを買ってくれるというアーベルには悪いが、令嬢達が話を聞きに来てくれないのなら、ひとつ、ドレスを提供する側に見てもらうというのもありだろう。
アーベルに鞄が大きいと呆れられながらも、この鞄を持ってきた理由はそこにある。