独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
 フィリーネを見たクラインは、目を細めた。じぃっとフィリーネを観察しているみたいだ。フィリーネは大きく息をついた。

(……ここで、負けてはだめ)

 できるだけ、有利な条件を引き出すのだ。ここで負けられないし、失敗したら、今後の販路の拡大にも差しさわりが出てくる。

「よろしゅうございます、うかがいましょう。殿下もそれでよろしいですか?」

 アーベルが静かにうなずく。

「……よかった。あなたは運がいいわ」

 とりあえず、交渉のテーブルにつくことはできた。ほっとしたのは見せないように、余裕に見せかけた笑みを浮かべる。

「それで、お嬢様に何を協力したらよろしいのですか」
「このレースを使って、ドレスを三着仕立ててくれない? その代金として、ドレス三着分のレースを納めるわ」
「——ほぅ」

 クラインは目を細め、面白そうな顔をしてこちらを見ている。
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