独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
 考え込む表情になったフィリーネだったけれど、いきなり手をぱちんと打ち合わせた。

「そっか、アーベル様にとっては私の国って魅力ないんですよね。親交を深める必要ないってことは——ごめんなさい、何か考えないと!」

 別に、アーベルはフィリーネ個人と親しくしたくないというわけではないのだ、とフィリーネは心の中で往生際悪く考えた。
 そう別に、彼が自分を好きになっているとか、恋をしたとか、そんなんじゃないんだと。フィリーネだって、彼との距離を測りかねている。
 ただ——これだけ大きな国の王子であることを考えると、フィリーネにとっては、今後、もっと勉強しないといけないと思わせてくれる相手であるのは間違いない。
 自分が、まだ女王になるための準備ができていないことはよくわかっている。

「——パウルスだったらよかったのに」

 街を歩きながら、不意にぽつりとこぼした。

「パウルスが、国を継いでくれるのなら、もっと……」

 違う。そんなの言い訳だ。
 パウルスが国を継いでくれたなら、もっと自由に生きられた、と心のどこかで思っているのも否定はできない。
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