独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!

「——これから、忙しくなるし……そんなものに行ってる場合じゃないんだけど、お断りしたら角が立つわよねぇ」

 もうすぐ完全に雪がとける。そうしたら、この国の人々は大忙しだ。畑を耕し、作物を植え付け、それから冬の間封鎖していた家だってきちんと整備しなければならない。
 フィリーネも、あちこち駆け回ってできる仕事にはどんどん積極的に手を出していくつもりだ。アルドノア王国でちゃらちゃら着飾って遊びながら王太子の相手をしている時間なんてない。

(どうやって、断ろうかしら……農業が忙しいって理由じゃきっと断れないわよねぇ……)

 芋の植え付けが忙しいので——なんていうのが理由にならないことはフィリーネにもわかる。だが、両親とフィリーネまで行ってしまったら、王宮から王族がいなくなってしまう。
 今、ユリスタロ王国の王族は現国王と王妃であるフィリーネの両親と王位継承者であるフィリーネだけ。両親はいとこ同士の結婚であり、母方のいとこであるパウルスも曾祖父の代までさかのぼれば王族だ。そんな事情で彼も王位継承権は持っているものの、厳密な意味では王族に含まれない。
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