独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「ほら、さっきの仕立屋との交渉とか、なかなか見事だったぞ。俺の想像もしないところから攻めていた」
「本当に? それなら、少し自信を持ってもいいかもしれないですね」
自分はすごく単純だとフィリーネは実感した。アーベルに誉められただけで、こんなにうきうきしてしまうなんて、と。
「あ、ごめんなさい」
向こう側から歩いてきた人とぶつかりそうになって、慌ててよける。アーベルに強く手を握られて、フィリーネの心臓が騒がしい音を立て始めた。
「まったく……お前は、とろい」
「しかたないでしょ、私の国でのお祭りの時よりうんとたくさんの人がいるんだから」
笑って、自分の心をごまかした。
気づくな、気づいてはだめだ——。
心臓が、ますますやかましい音を立て始めていて、フィリーネはそこから懸命に意識をそらす。
アーベルとは、ただの契約関係。フィリーネに求められているのは、三か月の間の虫よけ。
その代償に、考えてもいなかった好待遇を与えられているのだから——これ以上を望んではだめだ。
それなのに、彼とこうして過ごす時間は心地よくて、この時間がもっと続けばいいのになんてそんな考えさえ浮かんでくる。
「本当に? それなら、少し自信を持ってもいいかもしれないですね」
自分はすごく単純だとフィリーネは実感した。アーベルに誉められただけで、こんなにうきうきしてしまうなんて、と。
「あ、ごめんなさい」
向こう側から歩いてきた人とぶつかりそうになって、慌ててよける。アーベルに強く手を握られて、フィリーネの心臓が騒がしい音を立て始めた。
「まったく……お前は、とろい」
「しかたないでしょ、私の国でのお祭りの時よりうんとたくさんの人がいるんだから」
笑って、自分の心をごまかした。
気づくな、気づいてはだめだ——。
心臓が、ますますやかましい音を立て始めていて、フィリーネはそこから懸命に意識をそらす。
アーベルとは、ただの契約関係。フィリーネに求められているのは、三か月の間の虫よけ。
その代償に、考えてもいなかった好待遇を与えられているのだから——これ以上を望んではだめだ。
それなのに、彼とこうして過ごす時間は心地よくて、この時間がもっと続けばいいのになんてそんな考えさえ浮かんでくる。