独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
 ◇ ◇ ◇
 
 城に戻ったフィリーネのところに、ドレスが届けられたのはその翌日のことだった。
(……さすが、一流の仕立屋。仕事が早いわ)
 感心しながらさっそく試着してみたら、フィリーネのサイズにぴったり合うよう仕立て直されている。

「すごい綺麗ねぇ……」
「本当にねぇ……」

 フィリーネとヘンリッカの二人は、届けられたドレスを見てうっとりとした。
 うっとり見つめたついでに手で触れてみる。上質の布地の感触は、今まで身に着けていたドレスとはまるで違う。

「これ、フィリーネ様がもらったのでしょう?」
「そう。国に帰ったら、一着ヘンリッカにあげる。体形が似てるし、着られると思うのよ」

 時間もなかったから仕立てるのではなく、仕上がったものをフィリーネの体格に合わせて直してもらったのだが、それにしてもものすごく仕事が早いし丁寧だ。

 三乙女のレースは、今まで本当の美しさを発揮できていなかった。上質の布地とセットにしたら、今まで以上にきらびやかに見える。

「やあ、すごいねえ。これ着たらフィリーネも、いつも以上に綺麗に見えるんじゃないの?」
< 118 / 267 >

この作品をシェア

pagetop