独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
 さすがに王族全員で王宮を留守にするのはまずいだろう。これを口実に断ればいいのではないだろうか。
 だが、最初から断る理由を探しているフィリーネの背中を勢いよく押したのは、パウルスの言葉だった。

「悪い話じゃないと思うよ。だって大陸中から、よりすぐりの美女と美少女が集まってくるんだよ?『三乙女のレース』を売り込むのにいい機会だと思わないか?」
「あ、そういう考え方もあるわね……」

 フィリーネは真顔になって考え込んだ。
 ユリスタロ王国は、冬の間、国土は雪でほぼ完全に閉ざされてしまう。山の中の国なので、雪で閉ざされてしまうのは当然なのだが、はっきり言えばこの国は貧乏だ。
 昔のような権勢を取り戻す必要はない。だが、どうにかしてこの状況を変えられないかと立ち上がったのは、フィリーネの祖父母だった。
 フィリーネは亡き祖父母へと思いをはせる。
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