独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが！

　祖父は、今後の国のことを考え、特産品を作るために見込みある若者達を周辺諸国に留学させた。国外から嫁いできた祖母は、最初は慣れない土地で苦労したらしいが、祖父の願いを知り、嫁入りの時に持参した宝石をすべて売り払って、若者達の留学費用をねん出したそうだ。

　彼らが国に持ち帰ってくれたのは、精緻で美しいレースを作る技術だった。レースといっても糸を編んで作るもの、織って作るもの、また、布の縦糸と横糸を抜き、空いた空間に刺繍をほどこしていくものなど様々な技法がある。最終的に特産物として選ばれたのは織りの技法を用いるボビンレースだった。

　さらに国内で絹糸から生産するために、貧しい土地でも比較的育てやすい桑の木を育て、蚕を飼育する技術も東方の国に人をやって学ばせた。

　そうやって努力を重ね数十年がかりでようやく形になった技術だ。ここ数年、一般に流通させるだけの数を確保できるようになってきたものの、販路の確保に苦戦している。祖父母の意志を継ぎ、悲願を実らせたいとフィリーネも強く願っていた。