独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「今、言ったじゃないですか。厨房からもらったって——時々、菓子職人の人が部屋まで届けてくれるんです」
「……これは、ちょっとおかしいだろ」
「おかしいって失礼ですねぇ! おいしいって、パウルスもヘンリッカも喜んでますよ! そんな風に言うのなら、アーベル様にはあげません」
厨房の職人が焼いてくれたお菓子だって、おいしいと食べてもらえる人に引き取られた方が幸せなはずだ。アーベルの前に置かれた皿を遠ざけようとする。
「そうじゃないって。普通は厨房の方から届けないんだ。注文があったら、侍女が取りに行くのが普通だぞ」
「私達、よく食べるからじゃないでしょうか。アーベル様、召し上がらないなら一人で食べちゃいますよ。うん、おいしい!」
蜂蜜を使ったマドレーヌは、ほんのりとした優しい甘さとバターの香りがいい。アーベルの前で遠慮なく二つ目に手を伸ばしたら、アーベルはテーブルの上に置かれていた編みかけのレースに目をやった。
「お前は、会う度に何かしら手を動かしてるんだな」
例えば、裁縫室でドレスを仕立て直していたり、スカートの裾に刺繍を施していたり。今はレースを編んでいるところだし、もう少ししたらパウルスとの話にあったみたいに靴下を編み始める予定だ。
「……これは、ちょっとおかしいだろ」
「おかしいって失礼ですねぇ! おいしいって、パウルスもヘンリッカも喜んでますよ! そんな風に言うのなら、アーベル様にはあげません」
厨房の職人が焼いてくれたお菓子だって、おいしいと食べてもらえる人に引き取られた方が幸せなはずだ。アーベルの前に置かれた皿を遠ざけようとする。
「そうじゃないって。普通は厨房の方から届けないんだ。注文があったら、侍女が取りに行くのが普通だぞ」
「私達、よく食べるからじゃないでしょうか。アーベル様、召し上がらないなら一人で食べちゃいますよ。うん、おいしい!」
蜂蜜を使ったマドレーヌは、ほんのりとした優しい甘さとバターの香りがいい。アーベルの前で遠慮なく二つ目に手を伸ばしたら、アーベルはテーブルの上に置かれていた編みかけのレースに目をやった。
「お前は、会う度に何かしら手を動かしてるんだな」
例えば、裁縫室でドレスを仕立て直していたり、スカートの裾に刺繍を施していたり。今はレースを編んでいるところだし、もう少ししたらパウルスとの話にあったみたいに靴下を編み始める予定だ。