独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「両親からは、俺が仲良く暮らせるような女性を妃に、と言われている。国にとって、有益な相手というのももちろん選考基準にはなるが」

 アーベルとしては、国にとって有益な相手という条件さえ満たしていればよく、仲良く暮らすことのできる女性という条件は二の次だ。だが、それではフィリーネを側に置いておく理由がなくなってしまうし、目の前にいるライラを納得させることはできない。

「——でしたら、私を選ぶべきですわ!」

 ライラが声を上げる。
 だが、ライラの行動原理にあるのは、「自分が未来の王太子妃になること」であり、アーベルが大切にしたいと思っていることが一つ、足りていない。

「フィリーネと約束をしたのを忘れていた。悪いな」

 フィリーネとの契約を思う存分利用して、ライラの前から立ち去ったけれど、なんとなく居心地の悪さのようなものを覚えずにはいられなかった。

 そのもやっとする理由を理解したのは、従者として連れてきたパウルスの存在であるということを理解したのは、彼と一緒にいるフィリーネを見た時だった。
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