独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「そうね、パウルスの言うことにも一理あるかも」
王宮に、大陸中の美女美少女——国に帰れば多大な影響力を持っている——が集まってくるのだとすれば、自国の産業を売り込むいい機会ではないだろうか。
たとえば、花嫁に選ばれた令嬢に売り込んで、結婚式にこのレースを使ってもらうとかすれば、人気が出ること間違いなしだ。
「——行きましょう、ヘンリッカ」
がぜんフィリーネはやる気になった。王太子妃の地位はどうでもいいが、祖父の代から頑張って形にしてきた特産物を売り込む機会は作りたい。
「パウルス、椅子とテーブル片付けておいてくれる? お父様とお母様に相談してくる!」
そう口にした時にはもう走り始めている。さすがに王族が一度に王宮を留守にするのはまずい。両親と相談して、いい手を考えなければ。
「フィリーネ様、先走りすぎですって! 廊下は走ってはいけませんー!」
勢いよく部屋の中に飛び込み、その勢いで廊下に飛び出し、全力疾走するフィリーネの後を、慌てたヘンリッカが追いかける。廊下の掃除をしていた使用人達が、びっくりしたように二人を見ていた。