独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
 頭の中で二人を並べただけで、胸のあたりがちくちくする。もし、そこにいるのがライラではなくフィリーネだったなら。不意にそんな想像をしてしまって、慌ててアーベルの方に意識を戻す。

「俺は、気が進まない。たしかに——」

 首を横に振った彼は、たしかにと口にしたところで考え込む表情になってしまう。
 彼は恋愛には興味ないようなことを言っていたけれど、今、集まっている令嬢達は各国の王族貴族の中でも、ふるいにかけられた美女と美少女——フィリーネはのぞくとして——ばかり。
 だとしたら、アーベルが誰かと恋に落ちても不思議ではないような気がした。

「たしかに国のことを考えたらライラも有力な候補になり得るんだろうけどな」
「それは、私にはなんとも言えませんけど」

 アーベルとライラが結ばれたら、大陸の中でも有力な二国に強力なつながりができることになる。
 国のために一番利益のある相手と結婚するというアーベルならば、ライラを選ぶのがよさそうなものなのに、なんで今さらそんなことを言い出すんだろう。
 ちらり、とフィリーネはアーベルの方に目をやった。
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