独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
(……気のせい気のせい、気のせいだったら!)
パウルス以外、同年代の異性とほとんどかかわる機会がなかったのが敗因だ。アーベル相手にこんなに心臓がどきどきするなんておかしい、絶対に、間違っている。
「か……拡大鏡を導入してから、ずいぶんと作業効率が上がったと職人が言ってましたよ。それ以前は、肉眼で見ていたから、間違えた部分を解くのに苦労することも多かったんですって」
アーベルの手が、繊細なレースを何度も撫でる。そのたびに、フィリーネは心臓が跳ねるのを自覚せずにはいられなかった。
「……朝から晩までこんな細かいものを見ているなんて、大変だな」
「あ、それは父が禁じたんです。お城の一階に、皆で使える工房が用意されていて、そこでしか作業しちゃだめってことになってます」
「なんでだ?」
「レース職人って、目を酷使する仕事なんです。朝から晩まで作業していて、三十代で失明してしまう職人も昔はいたって聞きました。だから、作業は一日四時間までって決められてるんですよ。夏の間は、畑とか猟とか他の仕事が忙しいので、実際はそんなに時間が取れないという現実もあるんですけど」
パウルス以外、同年代の異性とほとんどかかわる機会がなかったのが敗因だ。アーベル相手にこんなに心臓がどきどきするなんておかしい、絶対に、間違っている。
「か……拡大鏡を導入してから、ずいぶんと作業効率が上がったと職人が言ってましたよ。それ以前は、肉眼で見ていたから、間違えた部分を解くのに苦労することも多かったんですって」
アーベルの手が、繊細なレースを何度も撫でる。そのたびに、フィリーネは心臓が跳ねるのを自覚せずにはいられなかった。
「……朝から晩までこんな細かいものを見ているなんて、大変だな」
「あ、それは父が禁じたんです。お城の一階に、皆で使える工房が用意されていて、そこでしか作業しちゃだめってことになってます」
「なんでだ?」
「レース職人って、目を酷使する仕事なんです。朝から晩まで作業していて、三十代で失明してしまう職人も昔はいたって聞きました。だから、作業は一日四時間までって決められてるんですよ。夏の間は、畑とか猟とか他の仕事が忙しいので、実際はそんなに時間が取れないという現実もあるんですけど」