独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「そうしようかしら。早い方がいいだろうし……」

 今の時期は、雪が積もっていないので比較的往復は楽だ。だが、こちらに来てから手紙を書いたのはレースの取引に関係する用事がある時だけ。きっと両親も心配している。

 こちらに来てからちまちま編んでいたレースのハンカチもだいぶ数ができた。手紙と一緒に送って、母から土産物屋に届けてもらおう。

 今日着ているドレスは、母が若い頃身に着けていた品を仕立て直したものだ。今日は誰にも会う予定がないから、これで十分だと思う。ちらりと視線を落とせば、レースのショールが目に入る。

(……けっこうな大作よねえ)

 自分で作ったショールだけれど、こうしてみるとなかなかの出来なので嬉しくなってくる。ヘンリッカが帰ってきたら、ヘンリッカも一緒に実家に手紙を書くようにしよう。

 パウルスも、実家に手紙を書きたいだろうか。彼はそのあたり、あまり気にしていないようだけれど。

「ちょっと、あなた」

 図書室にいるフィリーネに声をかけてきたのは、ライラだった。
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