独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「大変なのは、わかるが」
「あ、あなた達にはわからないわよっ!」
不意に自分の口から出た大声に、一番びっくりしたのはフィリーネ自身かもしれなかった。よく考えたら、アーベルの前でこんな大声を出したことはなかったかもしれない。
腰を浮かせた彼が驚いたように目を丸くしたけれど、フィリーネの言葉は止まらなかった。
「あ、あなた達から見たら、ただの——ただの、レースでしかないのかもしれないけど!」
民の生活を守るために、何か産業をと決意した祖父。留学費用を確保するために、嫁ぐ時に自分の両親から譲られた宝石を売り払った祖母。
国王夫妻の期待に応えようと、懸命な努力を続け素晴らしい技術を身に着けて帰ってきた人達。貴重な働き手を快く送り出してくれた人達。
最高品質の糸を作る術も、そこから美しいレースを作り上げる術も。ようやく形になってきたところだった。
フィリーネが羽織っていたショールは、フィリーネが自分で作ったもの。糸だって商品にするには品質が劣るものを分けてもらったもので、たしかに職人の手による繊細なレースとは出発点からして違う。
「あ、あなた達にはわからないわよっ!」
不意に自分の口から出た大声に、一番びっくりしたのはフィリーネ自身かもしれなかった。よく考えたら、アーベルの前でこんな大声を出したことはなかったかもしれない。
腰を浮かせた彼が驚いたように目を丸くしたけれど、フィリーネの言葉は止まらなかった。
「あ、あなた達から見たら、ただの——ただの、レースでしかないのかもしれないけど!」
民の生活を守るために、何か産業をと決意した祖父。留学費用を確保するために、嫁ぐ時に自分の両親から譲られた宝石を売り払った祖母。
国王夫妻の期待に応えようと、懸命な努力を続け素晴らしい技術を身に着けて帰ってきた人達。貴重な働き手を快く送り出してくれた人達。
最高品質の糸を作る術も、そこから美しいレースを作り上げる術も。ようやく形になってきたところだった。
フィリーネが羽織っていたショールは、フィリーネが自分で作ったもの。糸だって商品にするには品質が劣るものを分けてもらったもので、たしかに職人の手による繊細なレースとは出発点からして違う。