独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「デルガド王国には厳重に抗議しておく。王女が、他の者の私物を破壊するなんてとんでもない話だからな」
「あ、はい……」

 今のは絶対にキスだった。だけど、どうしてキスしたのか、なんて——聞けるはずもなかった。

(……ただの気まぐれってことなのかしら)

 アーベルが部屋を出て行った後も、フィリーネは立ち上がることができなかった。
 指で、自分の唇に触れてみる。そこに、たしかにアーベルの体温を感じた。ほんの一瞬のことだったけれど。
 

「フィリーネ、その顔どうしたのさ?」

 アーベルが出て行ってすぐ、パウルスが入ってくる。あきらかに泣きはらした直後のフィリーネの顔に、パウルスはぎょっとしたみたいだった。

「……ライラ様とやり合っちゃったのよ」
「あー、あのものすごい美人? デルガド王国の王女様だよね。フィリーネとやり合うって……ああ、アーベル殿下絡みでか」

 さすがパウルス。よく見てくれている。ライラがフィリーネにつっかかる理由なんて、アーベルのこと以外ない。
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