独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「まったく、アーベル殿下にも困ったものだね。フィリーネをこんなに泣かせるなんてさ」
「それは、しかたないわよ。だって、パウルスだって、最初は悪い話じゃないって言ってたじゃないの」

 アーベルとのかかわりによって、フィリーネの、それからユリスタロ王国に対する注目が高まっているのは本当のことだ。アーベルと出会うことがなかったら、きっと物事こんなにうまくは進まなかった。

「そうだけどさー、まさか、フィリーネが泣かされるっていうのは想定外だったから。タオル、温めて持ってくるよ。その方がいいだろ?」
「ありがとう、パウルス」

 なんだかんだ言って、パウルスはフィリーネを気遣ってくれる。そのことに安堵して、フィリーネは周囲を見回して気づく。

 ライラに破壊されたショールが、いつの間にか行方不明になっている。

 この部屋に戻ってきてすぐにヘンリッカはアーベルを呼びに行ってくれて……。アーベルがここに入ってきた時には、フィリーネはあのショールを大事に抱え込んでいた。どこに行ってしまったのだろう。
「今すれ違った時、ヘンリッカには、お茶の支度を頼んでおいたから、それでも飲んで落ち着こうよ」
「そうね。その方がいいかも」

 今日このあとの予定はどうなっていただろうか。フィリーネは考え込む。でも、今はまず、この泣きはらしてしまった目をどうにかする方が先決問題だった。
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