独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
  ◇ ◇ ◇
 
(……ライラにも困ったものだ)

 ショールを破壊されたのはアーベルの失態だった。まさか、デルガド王国の王女ともあろう者がそんな手に出てくるとは思ってもいなかったのだ。

 フィリーネとライラの間で争いになったのは昨日のこと。守りきれなかったことを後悔しているのだ。

(……ずいぶん、細かい細工だな)

 ユリスタロ王国のレースは、今や国中の女性が欲しがる品となっているが、このショールは商品にするには適さない品質の糸を集めて、フィリーネが少しずつ作ったのだそうだ。完成まで一年かかったというそれは、もちろん、技術という点では、専門の職人には遠く及ばないがアーベルの目には素晴らしい品のように見える。

「——祖父母の代からの悲願、か」

 おそらく、アーベルが思っているよりずっとユリスタロ王国の冬は厳しいのだろう。
 冬の間は、全国民が王宮に集まって暮らすとフィリーネが言っていたことを思い出した。

 燃料を節約したり、互いの生存確認だったりという事情もあるのだろうけれど、この城に民を招き入れることができるのかと、アーベルは自分がその立場に立ったとしたらと考えてしまう。
< 179 / 267 >

この作品をシェア

pagetop