独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
 彼女もフィリーネと同じように、見かけるたびに手に針や糸を持っている。

 彼女なら、フィリーネのショールの原型も知っているだろうし、元の形に戻せるのではないだろうか。昨日アーベルを呼びに来てくれたことから判断すれば、アーベルに対してさほど悪い印象もないだろう。

 ヘンリッカに頼むと決めたのなら、急いだほうがいい。

 フィリーネに見つからないように彼女と話をする時間がほしい。ヘンリッカがどこにいるのかを従者に探させたら、出かけているということだった。

 城に招かれている者達が、馬車を乗り降りするところまで行ってたずねると、まだヘンリッカの乗った馬車は戻ってこないという。

 しばらく待ってみようかと思っていたら、ちょうどヘンリッカの乗った馬車が戻ってきた。馬車から降りて、ヘンリッカは周囲を見回している。

「——ヘンリッカといったな。頼みがある」

 アーベルが声をかけると、ヘンリッカは驚いたようで、言葉通りに飛び上がった。アーベルに声をかけられて、わかりやすく露骨にうろたえている。
< 181 / 267 >

この作品をシェア

pagetop