独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「た、頼みって——パウルス、どうしよう?」

 ヘンリッカが呼びかけた先にアーベルが視線を巡らせれば、そこに立っていたのはフィリーネの従僕としてここに来ているパウルスだった。
 彼は眉間に皺を刻み込んで、じーっとアーベルの方を見ている。

「話を聞くだけなら。必ずお手伝いするとは、お約束はできないけど。そこに誰も使っていないっぽい部屋がありますよ——殿下」

 話があるのは、ヘンリッカだけなのに、なぜかパウルスまで一緒についてくるつもりらしい。

 招待客が急に増えることも想定して、部屋は多めに用意したのだが、結局使われなかった部屋がいくつかある。

 その中の一つにアーベルとヘンリッカを案内すると、パウルスは扉の近くに用心深く立った。どうやら、警戒心を捨てるつもりはないようだ。

「あの、それで、ご用件ってなんでしょう? できることなら——」

 自信なさそうに、ヘンリッカの声が震える。テーブルをはさんで二脚ずつ置かれている椅子の一つにヘンリッカを座らせた。

「お前は、座らないのか?」
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