独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「とにかく——ええ、とにかくまずは、王女らしく振る舞いましょう。マナーはおばあ様が叩き込んでくれたから大丈夫……なはず」
ここに来るにあたり、皆、精いっぱいの支度を整えてくれた。だから、なんとしても役目を果たさないといけないのだ。
「……では、フィリーネ様。まず、私達のなすべきことは」
フィリーネの決意が伝わってみたいで、ヘンリッカもいつもとは口調を変えてくる。
「女性の衣服の観察よ! レースを売り込みたければ、それを最高に美しく見せるためのドレスが必要だもの!」
馬車は都の門をゆっくりとくぐって都のルディンに入った。門を通り抜けた途端、フィリーネもヘンリッカも、周囲の喧騒に目を奪われた。
大通りは、たくさんの人が行き来している。この大通りだけで、ユリスタロ王国の総人口と同じくらいの人が行き来しているんじゃないだろうか。
それぞれの店の前には、華やかな看板や大きな旗が立てられていて、往来する人々の目を引こうと懸命になっている。
それに馬車の数も全然違う。道の左側を進行すると決められているから、道の真ん中で正面からぶつかり合うなんてことにはならないが、とにかくひっきりなしに馬車がやってきては去っていくのだ。