独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「すごいわねぇ……」
「本当ねぇ……ねえ、フィリーネ様、あの店のドレスすごく可愛い!」
「素敵ねえ。アルドノア王国って、流行の最先端でもあるのね」
ヘンリッカが店先のウィンドウに飾られているドレスを指さす。どうやら、あの店は仕立屋のようだ。ウィンドウに飾られているドレスはたぶん、今の流行なのだろう。美しいドレープを描くスカートには、遠目にはシルクと見える花飾りがたくさんあしらわれている。
「本当、うちみたいな貧乏国とは大違いだわ——ごめんなさい。大違いですね」
うっかり、ヘンリッカがいつもの口調に戻ってしまった。生まれた時からの友人なので侍女として振る舞うのはなかなか難しいみたいだ。
「あなたが侍女らしく振る舞うのもそうだけど、私が王女らしく振る舞うのもなかなか難しいと思うわ、きっと」
今日は城に入って、そのまま自由時間だ。明日になったら、城に滞在している令嬢全員を集めての華やかな園遊会が開かれると事前に聞かされていた。