独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「……あ」

 パウルスが気に入っていると言ったマドレーヌを取り上げ、ぱくりとかぶりつく。二個目、三個目と手を伸ばし、盛り付けられていたマドレーヌはすべて彼の胃の中におさまってしまった。
 それから彼はクッキーをひとつ取り上げ、その様子をぼーっと見ていたフィリーネの口に押し込んでくる。

「わ、何するんですかっ! ……おいしい、けど」

 チョコチップのちりばめられたクッキーは、口の中に押し込まれたのが悔しいけれど、すごくおいしい。口の中でさくっと崩れて、チョコレートの甘さがじんわりと広がる。
 もぐもぐしていたら、アーベルがティーカップにお茶を注いで前に置いてくれた。まさか、そんなことまでしてくれるとは想定外すぎて、何も言えなくなる。

「えっと……」

 やっぱり、耳のあたりが熱くなった。どうしても自分は単純にできているらしい。アーベルは、フィリーネに興味なんてないとちゃんとわかっているのに。

「あの、昨日は……ごめんなさい。私……」

 いたたまれないから、もごもごとうつむいたまま続ける。昨日は、アーベルにものすごく迷惑をかけてしまった。

 彼の前で、あんなにぼろぼろ泣くなんていうのも想定外だったし——。ぽんとアーベルの手が、フィリーネの頭に載せられる。
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