独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
(私って、本当に単純なんだから……!)

 とりあえず、アーベルと手を繋いでいるという事実をまだ受け入れ切れてはいないけれど、これはそういうものなのだと何とか納得するしかないだろう。

「私にならうって何を?」
「ほら、この間お前と話をした時——お前の国は、国民との間がものすごく近いのに気づいたんだ。俺は、民の方を向いて、本気で考えたことはなかったから」

 そこまで口にして、アーベルは慌てた様子で付け足した。

「言っておくけどな! 民のことを考えなかったわけじゃないぞ! ただ——うまく言えないが、少し、俺の考え方はずれているんじゃないかと、そんな気がして」

「あら、アーベル様。そんなの、わかりませんよ。私の国は、人の数が少ないからそうできるだけで。この国の全員と同じように向き合ったら、きっとアーベル様いっぱいいっぱいになっちゃいます」

 彼が、フィリーネの国を認めてくれたのは、素直に嬉しい。

 だが、その国その国に適したやり方というものがあり、むやみにユリスタロ王国の真似をしてもしかたないのではないかと思うのだ。もっとも、アーベルの方も、そんなことくらいとっくに考えているのだろうけれど。
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