独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「……でも、この街も俺が想像していたのとはずいぶん違っているみたいな。ほら、見てみろ。あれ、お前のレースだろ」
「私のレースじゃないです——ってわあ!」

 街を行く女性達の帽子やドレス、バッグなどいたるところに可愛らしいレースがあしらわれている。

「やられた! 見てくださいよ、あれ——!」

 フィリーネが、三乙女のレースの販路としたのは、この国ではクラインの店だけだ。だが、街中の仕立屋があちこちに三乙女のレースが入荷したと張り紙をしている。

「クラインから買い取ったんじゃないか?」

「まさか! あんなにあちこちいきわたるほどの数はないですよ! 一枚作るのにものすごい時間がかかるんです……ごめんなさい、今からクラインさんのところに行ってもいいですか?」

「すぐそこだったな——今、手が空いているかどうかわからないが」

 もちろん、クラインから買い取って、店に置いているというのであれば問題ないのだ。それを駄目だとはフィリーネには言えない。
 だが、街中を行く女性達の身体を飾っていたレースは、綺麗ではあったものの、ユリスタロ王国のものとはまるで違う。
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