独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「肖像画見せてもらったけど、アーベル王太子ってものすごくかっこいいらしいですね。会うの楽しみ!」
「そんなことばかり言ってると、パウルスに告げ口するわよ」
「それはだめですってば!」
ヘンリッカははしゃいでいるものの、フィリーネの胸の中は不安でいっぱいだった。
(……うまくやることができたらいいんだけど。おじい様の代からの悲願だもの)
これから先、民の生活を安定させることができるかどうかはフィリーネの肩にかかっていると言っても過言ではない。
こうやって華やかな光景を見たら、たしかに少しはうきうきしてくるけれど、それよりは肩にのせられた責任の方がはるかに重く、親友といとこを連れてきていても不安を感じないわけにはいかなかった。
今回、フィリーネは両親の名代という名目でアルドノア王国を訪問することになっている。例年は一週間ほどの滞在だが、今回はレースの販路を確保できるまでとどまるつもりだ。できれば最終的に決定した王太子妃に、商品を売り込めればもっといい。