独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「フィリーネ様が、こちらを裏切ってないということは、すぐにわかりましたよ。あのレース、もちろん、品質が悪いわけではないのですが、三乙女のレースには及びません。本物を取り扱っているのは当店だけ——ここに、私のデザインとうちの針子の技術が加われば、他の仕立屋など恐れるに足りませんよ」
「……そう、なの……?」

 仕立屋としてのクラインの本気を見せつけられたような気がした。そういえば、彼がフィリーネのところに届けてくれたドレスも小物も、全部素晴らしいものだった。

「よかった。クラインさん、怒っているんじゃないかと心配だったの。だって、あきらかに偽物なんですもの」
「そんなことより、フィリーネ様。本日のドレスはどうなんでしょうね? 私のお贈りしたドレスが気に入らないと?」

 きりっとクラインが眉を吊り上げて、フィリーネは首をぶんぶんと横に振った。まさか、クラインのところに来るとは思ってもいなかったのだ。たしかに、だいぶ油断した格好なのではあるが、見なかったことにしてほしい。

「その点については、俺も何か言われるんだろうな」
「殿下まで——ははあ、今日はお忍び、というわけですか」
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