独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
さすがにクラインは察しがいい。白いシャツにズボンにベスト、それからごわっとした上着というアーベルの格好を見て、今日はお忍びだと即座に判断したようだ。
「ああ、だが、街に出てきていいこともあったな。フィリーネ、お前、あのレースについてはすぐに手を打つんだろ?」
「もちろん。私がお取引してるのは、クラインさんのとこだけだってちゃんと皆に言っておきます」
「——ありがとうございます。ああ、今出回っているレースですが、品質は悪くないですよ。値段と品質から考えたら、ものすごいお買い得商品です。街の人間には、ああいう安価な商品も必要です」
「知ってるわ、そんなの。だから——三乙女のレースを買えるのは、クラインさんのお店だけってもっと強く主張するだけにするわ。偽物が氾濫してるなんて言わない」
レース産業は、もともとどこの国にも存在している。たまたま、今、大流行中なだけであって、ユリスタロ王国の専売特許と言うわけでもないのだ。
他の国の人達が仕立てたレースを偽物だとか、安物だとか、けなしていい理由なんてない。
「フィリーネ、俺からも一つ提案があるんだが」
クラインとフィリーネの会話にアーベルが割り込んできた。突然割り込んできた彼に、二人とも開きかけた口を閉じてしまう。
アーベルは、傍らのテーブルをとんとんと指先でたたきながら、口にした。
「ああ、だが、街に出てきていいこともあったな。フィリーネ、お前、あのレースについてはすぐに手を打つんだろ?」
「もちろん。私がお取引してるのは、クラインさんのとこだけだってちゃんと皆に言っておきます」
「——ありがとうございます。ああ、今出回っているレースですが、品質は悪くないですよ。値段と品質から考えたら、ものすごいお買い得商品です。街の人間には、ああいう安価な商品も必要です」
「知ってるわ、そんなの。だから——三乙女のレースを買えるのは、クラインさんのお店だけってもっと強く主張するだけにするわ。偽物が氾濫してるなんて言わない」
レース産業は、もともとどこの国にも存在している。たまたま、今、大流行中なだけであって、ユリスタロ王国の専売特許と言うわけでもないのだ。
他の国の人達が仕立てたレースを偽物だとか、安物だとか、けなしていい理由なんてない。
「フィリーネ、俺からも一つ提案があるんだが」
クラインとフィリーネの会話にアーベルが割り込んできた。突然割り込んできた彼に、二人とも開きかけた口を閉じてしまう。
アーベルは、傍らのテーブルをとんとんと指先でたたきながら、口にした。