独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「今日、急ぐ必要もないだろ。帰ってからじっくりお前の仲間達と相談してからでも間に合うはずだ。だいたい、手紙は、城に帰った頃には締め切ってるぞ」

 各国に送られる手紙は、城の使用人が届けてくれることになっている。だが、正午には出立してしまうから、遅くとも午前中には渡さないといけないのだ。

「あ、そうですね……なんで、もっと早く思いつかなかったのかしら!」

 アーベルに言われるまで気が付かなかったのはしかたないが、正規品を証明する必要性に気づいた以上、さっさと対応しなければ。

「看板の横にかける札がいいかしらね。それまでの間は、お父様の書状でも店先に掲示してもらおうかしら……次の納品の時に持ってきてもらうわね」

 クラインに近々追加の納品を約束して店を出る。クラインと話をすることができたから、少し落ち着きを取り戻した。
 それにしても、街中をアーベルと二人で歩くのは微妙な気分だ。いつもアーベルはフィリーネに触れてくるけれど、それはあくまでも彼の周囲に集まってくる人達に見せつけるため。
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