独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「遠慮するな。このくらい、誰でも買うだろ」
「ありがとう、ございます」

 アーベルの勢いに押されて買ってもらうことになってしまった。

「本当に、可愛い……こちらの国には、こんなに可愛いものがいっぱいあるんですね」

 さっきの飴も、この腕輪も。フィリーネの国には存在しない。
 国に戻ったら、子供達に土産話として話してやったら喜ぶだろう。出発前に市場に立ち寄って、お土産に飴をたくさん買ってもいいかもしれない。
 こんな木の腕輪なら、フィリーネの国の職人達だって作ることができるかもしれない。そうしたら、もう一つ、冬に作ることの製品が生まれることになる。
 フィリーネ一人では、こんなにあちこち見て回らなかっただろうから、そこでもまたアーベルに感謝した。

「……本当に、いいんですか? もう返しませんよ? もらったら、私のものですからね?」

 冗談めかした口調で、彼に告げる。

「そのくらい、たいしたことじゃないから気にするな」
「嬉しい、です——本当に!」

 アーベルからドレスを贈ろうと言われた時は、断った。だって、フィリーネが受け取るには高価すぎる品だと思ったから。
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