独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!

(でも、ヘンリッカとパウルスがいてくれるから……大丈夫よね、きっと)

 自分に懸命にそう言い聞かせる。
 ヘンリッカもパウルスも子供の頃から一緒に育ってきた。二人がいてくれるのなら、これから先、どんなことだって乗り越えていけそうな気がする。
 明日の園遊会で着るためのドレスは決めてあるが、それはフィリーネにとって昼用のドレスの中で一番いいドレスだ。
 それから、近々行われるであろう舞踏会のためには、夜用のドレスの中で一番いいものを着る。
 もともとそれほどたくさんのドレスを持っているわけでもないので、それ以外の選択肢はない。その先、さまざまな場で着るためのドレスは、他の女性達のドレスを見てから手持ちのドレスを仕立て直して用意するつもりだった。
 フィリーネ達の城には、専用の裁縫係なんていない。一年に一度、国外から仕立屋を招いて一年分まとめて仕立ててもらう。あとは、古い衣服を自分達で仕立て直したり、一から仕立てたりしてまかなう。
 だいたい、素敵なドレスを仕立てても着ていくところなんてないので、わざわざ仕立屋を招いて仕立てるのも、国外からの賓客を迎える時のためだったり、国外の式典に招待された時に身に着けるためだったりなので、年に一度で十分なのだ。
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