独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
 子供の頃から、パウルスはヘンリッカに好意を寄せていた。

 彼の好意は、周囲の大人達がこぞってふたりをからかうほどにわかりやすくて。からかわれたヘンリッカの方もまんざらではないのはあきらかだったから、周囲は二人をほほえましく見守っていた。

 フィリーネも二人のことは祝福しているけれど、アーベルとの関係に彼らをお手本とするわけにもいかない。

 馬車はごとごとと街中を走っていく。ユリスタロ王国から来る者との待ち合わせ場所に指定したのは、街中を通り過ぎ、外に出て少し行ったところにある開けた場所だった。

 クラインに渡す前にフィリーネが商品を確認したり、パウルスが引き継ぎを行ったりするため、他の人の邪魔にならない場所を選んだのである。

「……荷物はこれね。ありがとう。お札はできたかしら」
「札は、こちらでございます。姫様は、なんだかお綺麗になられましたね」
「え、そう? そうかしら……ああ、それはきっと、こっちでお洒落な女性を山ほど見たからよ! 髪型も、ヘンリッカが変えてくれたの!」
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