独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
 荷物を運んできたおじさんは、フィリーネもよく知っている男性だった。というか、国民全員が顔なじみであるわけだが。

「じゃあ、この場で軽く品質を確認してしまうわね。不良品はないと思うけど念のために——皆、ちゃんとやってくれてるのももちろんわかってるんだけど」

 クラインの店に納入した後も、クラインと一緒にフィリーネ、ヘンリッカ、パウルスの誰かが品質を確認するのは約束だ。だが、一応、ここでも確認しておかないと何かあったら困る。

「そりゃ、国をあげての大事業ですからねぇ。確認は必要ですって」
「このお札も素敵。やっぱり、うちの国民って手先が器用な人が多いわよね」

 札の作成を引き受けてくれたのは、家具の作成や修理を行っている職人だった。

 札の中央には、ユリスタロ王家の紋章が彫り込まれ、周囲にはレースのような繊細な模様が彫り込まれている。この偽物を作ろうと思ったら相当大変になるはずだ。

 クラインの店、入り口の脇にこの札をかけてもらうつもりでいる。三年後、クラインの店以外にも取引先を増やした時、同じ札をかけることになるだろう。
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