独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
 フィリーネが改めて決意を固めた時には、馬車は大通りを離れ、城の門をくぐろうとしているところだった。馬車がゆったりと停止し、衛兵が身元を確認しにやってくる。

「ユリスタロ王国フィリーネ王女殿下、侍女のヘンリッカ、それと従僕のパウルス。以上三名でよろしいですかな?」
「ええ。ありがとう——荷物は、従者のパウルスが運んでくれます」
「では、どうぞ中にお入りください」

 衛兵が手元に持っている書類と、フィリーネが差し出した書類を照らし合わせ、問題がないと判断したところで通る許可を与えられた。
 馬車から降りたのは、城内の一角だった。フィリーネ達と時を同じくして、到着したらしい他の女性に目が行く。
 彼女は、渦巻く豪奢な金髪を、真っ赤なリボンで束ねていた。ドレスの色も、強烈な赤。けれど、彼女の美しさを最大限に引き出す仕立てで、よく似合っている。
 馬車の紋章から判断すると、彼女はライラ・バルヒェット。昨年レースの売り込みに失敗したデルガド王国の王女様だ。
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