独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
 ライラは三人の侍女を連れ、荷物も多数持ってきているようだ。フィリーネも仕立て直すドレスは山のように持ってきたけれど、トランクの数と大きさから判断すると彼女はその三倍くらいの数を持ってきているように見える。

(……なるほど、あれだけの荷物を持ってきているのなら、侍女も一人では足りないというわけね)

 そのほかに数名の侍従らしき男が付き添っていて、大量の荷物を手際よく運び込んでいく。

「……我が家の馬車が、急にみすぼらしく見えてきました」

 ヘンリッカがしゅんとした。
 今日ここに来るまでパウルスが御してくれた馬車は、ヘンリッカの実家から借りたものだ。長期間、さすがに王家の馬車を持ち出すわけにはいかなかったので。

「いいのいいの。そんなこと気にしていても始まらないでしょ」

 と、ヘンリッカを慰めたものの、実をいうとフィリーネも身の置き所がないように感じている。
 馬車の大きさも、それから造りも全然違う——どうりで、昨年侯爵がレースの売り込みに行った時、あっさり追い返されたはずだ。わかってはいたが、国力の差を改めて突き付けられて落ち込んだ。
 フィリーネの方を見てふっと笑ったライラは、侍女達の方に何か言うなり、それきりこちらを見向きもせずに行ってしまう
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