独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
 幸いというかなんというか、今、フィリーネが身に着けているのは、クラインから提供されたドレスではなく、普段身に着けている動きやすいものだ。実用性一点張りの、地味な服で、どうひいき目に見ても王女という品格は持ち合わせていない。

「どうするって——依頼人に確認を取らないとだろ」
「俺達、顔も見られてるし——」

 どうやら、彼らはフィリーネがここにいるというのは想定外だっただけではなく、フィリーネの扱いに困惑しているようだ。ここぞとばかりに、フィリーネは畳みかけた。

「お願い。私、ユリスタロ王国の人間なの。帰してくれたら、すぐに国に帰るし、もうアルノドア王国には来ないから——あなた達のことも、何も言わない」

「そうは言われてもなぁ」
「まあ、無用な殺生はしたくないけどなぁ……」

 どうやら、彼らは心底困っているらしい。とりあえず、といった様子で、一人がフィリーネに縄を持って近づいてきた。

「お願い、縛らないで……私、私……」

 身をひるがえして逃げ出そうとするが、すぐにつかまってしまう。
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