独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「お前ら、よくもフィリーネを!」

 馬から飛び降りたアーベルは、フィリーネの腕を掴んでいる男に向かって飛びかかった。慌てた男は、フィリーネを突き飛ばし、剣を抜いてアーベルに応戦する。
 アーベルは、圧倒的に強く、男はあっという間に地面に崩れ落ちた。さらに二人目、三人目。アーベルと一緒に来た護衛達が手を出す暇もない。
 フィリーネは、その光景を呆然と見つめていた。アーベルがこんなに強いなんて、考えたこともなかった。

「——待たせたな」

 こちらに向かって、アーベルが微笑みかける。
 いったい、どうやって、ここに気が付いたのだろう。
 フィリーネが、それを問う間もなく、抱えあげられた。

「まったく——出かけたかと思ったら、事件に巻き込まれて。本当に、お前は手間がかかるな」
「……て、手間がかかるってあんまりな言い方です!」

 そう勢いあまって返す。返してから自分の言葉があんまりだったことに気づいて青ざめたけれど、アーベルはフィリーネをぎゅっと抱きしめてくれた。
< 245 / 267 >

この作品をシェア

pagetop