独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
 そこから先は、大忙しだった。男達をとらえ、城に連行する手はずを整える。

 ユリスタロ王国から運ばれてきたレースは、本来ならクラインの店に運び込まれるのだけれど、馬車が大事な証拠品ということもあり、一度王宮まで持っていくことになった。

 フィリーネは、というとアーベルの馬に同乗させられている。彼の前に座っているのは落ち着かなかった。

「……どうして、私がさらわれたってわかったんですか?」

 フィリーネが問いかけるとアーベルは気まずそうに視線をそらした。それから、手でくいっとパウルスの方を示す。

「あいつと出かけただろ? だから——なんとなく、気になって追いかけたんだ」
「気になってって……なんで?」

「あーもう、うるさいな! お前、あいつと付き合ってるんだろ? だから、あいつと一緒に出かけるのが面白くなかったんだ」
「……は?」

 たっぷり三分固まってから、フィリーネは返した。パウルスと付き合ってるって、そんな質の悪い冗談いったいどこから出てきたというのだろう。
< 246 / 267 >

この作品をシェア

pagetop