独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
 その他に、偉そうな人が何人か集まっている。服装からするとライラの国の人だろうか。
 そして、そこに呼ばれていたのはそれだけではなかった。

(……なんで?)

 なぜか、ライラまでその場にいる。彼女は、不機嫌そうな顔をしてフィリーネを見ていた。ライラがフィリーネに不機嫌な顔を向けるのは今に始まったことではない。

 彼女と、にこやかに会談できたことなんて一度もなかった。

「——さて、これで全員揃ったかな」

 アーベルは、父であるアルドノア国王の隣に立っていた。彼がこちらに向けて小さく笑みを投げてくれたから、それだけで心臓が少し、落ち着いてきた。

「……先日、ユリスタロ王国のフィリーネ姫が誘拐されるという事件があった。フィリーネ姫、間違いないか」
「間違いありません。でも、それは……私が、馬車に乗っていたせいで」

 彼らの目的は、積み荷の方なんじゃないかと思う。フィリーネ本人より、三乙女のレースの方がはるかに価値がある——はずだ。

「——それは、そうだが誘拐されたという事実には変わりがないだろ」

 そう言うアーベルはちょっと怒りを隠しきれないようだった。そして、ライラの方に向きを変える。
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