独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「だって……こんなに素敵な品だとは思わなかったんだもの」

 ぷいっとライラは横を向く。その様子は、完全にふてくされていた。

「……ライラ姫は、レース職人である乙女達を自国に連れ去る計画も立てていたそうだ」
「——はぃ?」

 今度こそ、フィリーネは奇妙な声を上げてしまった。今回は、さすがに抑えられなかった。レース職人の乙女達なんて、どこにもいない。

「ええとですね……三乙女のレースとは銘打ってるんですけど、レースを作ってるのは乙女じゃないので……」

 どちらかといえば、職人はおじさんも多かったりする。

 だって、雪が積もる冬の間、外での作業はできないから、室内で国の特産品を作ることはできないだろうかというところから始まった計画だ。職人として働いているのは、農家の主に猟師に漁師。それに冬の間は客の来ない商店の主や、城の庭師。それから、彼らの妻や娘、息子といった家族達。レース職人としてだけ働いている者は現時点では一人もいない。
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