独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「ええと、まあ、その……乙女もいないわけではないのです、が——」

 乙女が作っていると言った方が女性受けがいいような気がするので、その誤解はあえて解かなかった。
 まさか、そんな——そんなことになるなんて、想像もしていなかったのだ。自分が甘かったということをまた思い知らされてフィリーネはうなだれた。

「う、嘘よ! だって、あんな繊細なレース——女性にしか作れないでしょ! 我が国のレース職人は、大半が女性だわ」
「それは——その国の違いというしか」

 デルガド王国では若い女性が職人として働いているかもしれないが、フィリーネの国では違う。そんなことを言われても困るだけなのだが。

「……そんなことを言われても」

 ライラにつかまれ、がくがく揺さぶられながらフィリーネはぼやいた。納得できないのはしかたないかもしれないが、ここで揺さぶられても困る。

「そこまでにしてもらおうか。お前のしたことは、許されることではない」

 結局、ライラについては、デルガド王国への強制送還が決まった。あとは、国に戻ってからデルガド王国側に処分を任せることになる。
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