独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「お前、本当にお人好しなんだな」

 ユリスタロ王国に向かう馬車の中、アーベルがため息をつく。アーベルとフィリーネが並んで座り、二人に向かい合うようにしてヘンリッカとパウルスが座っていた。

「あのですね、アーベル殿下。フィリーネがお人よしなのって、今に始まったことじゃないんですよ——」

 横からパウルスが口をはさむ。

「何よ、パウルス。その言い方ってひどいんじゃないの?」

 フィリーネは、思いきりわかりやすくふくれっ面になった。お人よしって言い方はどうかと思う。性格が悪いよりはずっといいけれど、お人よしで片付けられてしまうのはちょっとむかっとする。

「あ、そうそう——フィリーネ様、これ。修理できましたよ」
「……うそっ」

 おとなしく座っていたヘンリッカがフィリーネに差し出したのは、あの日ライラに破かれてしまったショールだった。

 破れてしまったところは、他のレース——たぶん、ヘンリッカのものだ——と上手につないであり、元のデザインとは一部変わってしまっている。たぶん、元の形には戻せなかったからだろう。
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