独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「面白いからに決まってるじゃないですか!」

 にやにやしっぱなしのヘンリッカが意気揚々と宣言する。その一言で、アーベルの中では、ヘンリッカを敵に回してはいけないと認識されたみたいだった。

 というか、アーベルに対してちょっと遠慮してたヘンリッカが、完全に遠慮をなくしたようだ。フィリーネに対する態度とさほど変わらない気がしてきた。

「なんだか、ずいぶん長い間留守にしていたみたい!」

 窓の外を流れる景色が、見慣れたものへと変化してきた。子供の頃から、毎日同じ景色を見ていたのに、この数か月は、たくさんの人が集まり、たくさんの商品が焦点に並ぶ全然違う景色を見ていた。

 けれど、久しぶりに見た故郷の光景はやはりフィリーネをほっとさせてくれる。

「こっちの空気は、やっぱりおいしいよね……」

 ヘンリッカと並んで座っていたパウルスがしみじみとつぶやく。フィリーネもそれには完全に同意だった。
 アルドノア王国も楽しかったけれど、生まれ育った故郷に勝るものはないと思う。
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