独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「とても、カッコイイと思いますけど」
「ヘンリッカ、僕の前でその発言はどうかと思うんだけど?」
はいはい、とヘンリッカがパウルスをいなす。この二人、幼い頃からの仲良しということもあって、婚約してからもずっとこんな調子だ。決まった相手のいないフィリーネはちょっとうらやましく思う。
(……遠くから見ている分には素敵なんだろうなー、お近づきになるのは遠慮したいけど)
と、絵をじーっと見つめていたら、ヘンリッカが自分のことを棚に上げてフィリーネを急かしてきた。
「見とれている場合ではないわ、フィリーネ様。私達の部屋は南の客室、��ヤグルマソウの間�≠ナすって」
「あら、それは幸先いいわね。ヤグルマソウの花言葉ってたしか『幸運』って意味だったでしょ」
一つの花がいくつも花言葉を持っているのは、よく知られているが、ヤグルマソウの花言葉には『幸運』も含まれていたはずだ。これから先、幸運を味方につけなければいけないのだから、その花言葉を持つヤグルマソウの間に通されたのは幸先がいい。
通された部屋に入り、フィリーネもヘンリッカも思わず声を上げてしまった。