独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!

「これ、客室よね……じゃなかった、客室ですよね……」
「ええ、そのはずよね……一人一人にこんなに贅沢な部屋を与えてるのかしら」

 フィリーネが通されたヤグルマソウの間は、広い一室だった。足が埋もれてしまいそうなほどにふかふかの絨毯が部屋中に敷き詰められている。
 クローゼットは、フィリーネが持ってきたドレス全てを吊るしても、まだ半分も埋まらないほどに広い。
 飾り棚と暖炉が壁の一角を占め、部屋の反対側には立派なベッドが置かれている。天蓋からは、どっしりとした紺の布がつるされていた。ヤグルマソウという花の名前を意識したのか、窓にかけられたカーテンは柔らかな青だ。
 全体的に落ち着いた色調で整えられていて、とても居心地がよさそうな部屋だ。そして、小さな部屋が二つついていて、そこに侍女が宿泊するらしい。
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