独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!

「どっちの部屋にもベッドが二台ずつあります。片方を私が寝室として使わせてもらいます」

 侍女部屋の様子を確認しに行ったヘンリッカが戻ってきた。
 女性の使用人は、夜中に主の部屋に呼ばれることもあるからすぐ側の部屋に入るそうだ。従僕達は従僕達でまた別に部屋が用意されているという話だった。
 二間ついていて、ベッドが二台ずつあるということは、侍女は四人まで連れてきて大丈夫だったということか。そんな任宇卯を

「ヘンリッカの寝室じゃない方を、僕の控室にしていただけるとありがたいな。他の従僕達は廊下で待たされるんだって」
「……あなたがそこで控えているとも思えないけど」

 たぶん、パウルスはあちこち動き回って販路を確保するための情報収集にいそしむだろうし、そうしてもらった方がいい。馬車を動かす時にはパウルスに来てもらう必要があるかもしれないけれど、フィリーネは自分で馬車を御することもできる。
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