独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
 パウルスを連れてきたのは、建前上の問題も大きいのだ。あとは、ヘンリッカと長期間遠距離恋愛させるのは気の毒だと思ったから。なにせ、本国にいる時は毎日顔を合わせているのだから、フィリーネの都合で引き離すのは申し訳なかった。

「建前は必要だろ、建前は!」
「……そうね。じゃあ、ヘンリッカ。あなたどちらの部屋を使うか選んできて。そして、使わない部屋をパウルスの控室にしましょう。それから明日の園遊会に着るドレスを手入れして……裁縫室の場所も確認しないとね」

 フィリーネの言葉に、目の前の豪華な光景に目を奪われていたヘンリッカが我に返って動き始める。

「私、裁縫道具を出してきます。あと、アイロンも。今日のうちにドレスの皺をとっておかないといけませんから」
「じゃあ、僕は他の従僕達とおしゃべりしてくるよ。馬車の手入れをしながらね」

 それぞれに役割を分担して忙しく動き始める。フィリーネ達の計画は、まだ始まったばかりだった。
 
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